糖尿病網膜症について
内科で「糖尿病です」と告げられた日。
健康診断で「眼底に異常があります」と指摘された朝。
家族が糖尿病で視力を失ったのを、間近で見てきた経験。
糖尿病網膜症は、痛みもかゆみもなく、ある日突然「見えない」が訪れる病気です。そして、見えなくなってからでは、視力を取り戻すことはできません。
でも、逆に言えば適切な時期に検査を受け、適切な治療を続ければ、ほとんどの方が視力を守れる病気でもあります。
大切なのは、「いつ」「どこで」目を診てもらうか。当院は、定期検診から、レーザー治療、抗VEGF硝子体注射、そして最終手段の網膜硝子体手術まで、一つの場所で対応しています。
当院で糖尿病網膜症の治療を受ける3つのメリット
1. 初期の検査から、最終手段の手術まで、すべて当院で完結
糖尿病網膜症は、進行度に応じて治療法が大きく変わる病気です。初期は経過観察、中期はレーザー、進行期は硝子体注射や網膜硝子体手術と、ステージごとに必要な医療が変化していきます。
一般的な眼科では、レーザーまでは対応できても、進行期の網膜硝子体手術になると大学病院などへ紹介になるケースが多くあります。「これまで通っていた先生に最後まで診てもらえない」という状況は、患者さまにとって大きな不安です。
当院は、日帰り網膜硝子体手術に対応しています。初期の眼底検査から、進行期の硝子体手術まで、慣れ親しんだ場所で一貫して治療を受けていただけます。
2. 「最悪の場合」までカバーできる、安心の手術体制
増殖糖尿病網膜症が進行すると、硝子体出血や牽引性網膜剝離など、緊急の硝子体手術が必要になる場合があります。これらは眼科手術の中でも特に難易度が高く、対応できる施設が限られます。
当院は、こうした最も重い病態に対しても、日帰りでの網膜硝子体手術が可能です。「最終手段まで自院で対応できる」という体制があるからこそ、初期の段階から責任を持って経過を見守れる──これが当院の考え方です。
3. 内科との連携と、生涯にわたるフォロー体制
糖尿病網膜症の治療は、眼科だけでは完結しません。血糖・血圧・脂質のコントロールが治療の根幹であり、内科主治医との情報共有が不可欠です。
当院では、糖尿病眼手帳・糖尿病連携手帳を活用し、内科主治医と検査結果や病期情報を共有しています。
また、糖尿病網膜症は治療後も再発・進行の可能性があり、一度治療したら終わりではなく、生涯にわたる経過観察が必要な病気です。当院は地域に根ざした眼科として、白内障・緑内障など他の眼疾患も含め、患者さまの目の健康を長期にわたって支えていきます。
受診・治療の流れ
-
初診・精密検査
糖尿病と診断された方、健康診断で眼底異常を指摘された方は、まず精密な眼科検査を受けていただきます。所要時間は約1〜2時間です。
- 視力検査・眼圧検査
- 散瞳下での眼底検査
- 光干渉断層計(OCT)による黄斑部の精密検査
- OCTアンギオグラフィー(OCT-A)による網膜血管の評価
OCT-Aは、造影剤を使わずに網膜の血管構造や無灌流領域(血流が途絶えた部分)を評価できる検査です。従来の蛍光眼底造影検査と比べて、患者さまへの身体的負担が少なく、繰り返しの評価にも適しています。
-
結果説明と治療方針の決定
検査結果に基づき、現在の病期と今後の治療方針について丁寧にご説明します。すぐに治療が必要ない場合は、次回の検診時期をご案内します。
-
治療(病期に応じて)
- 初期
- 内科治療の継続+定期的な眼底検査
- 中期
- レーザー光凝固術
- 進行期
- 抗VEGF硝子体注射、必要に応じて網膜硝子体手術
- 糖尿病黄斑浮腫がある場合
- 抗VEGF硝子体注射などを実施
-
定期検診(生涯にわたるフォロー)
治療の有無にかかわらず、糖尿病網膜症は経過観察が極めて重要です。日本糖尿病眼学会のガイドラインに準拠し、病期に応じて以下の間隔で定期検診を行います。
病期 推奨される受診間隔 糖尿病(網膜症なし) 1年に1回 単純糖尿病網膜症(軽症〜中等症非増殖) 6か月に1回 増殖前糖尿病網膜症(重症非増殖) 2か月に1回 増殖糖尿病網膜症 1か月に1回
こんな方は、最初の6か月は毎月レベルでの診察をおすすめしています
上記は一般的な目安ですが、以下に該当する方は、たとえ網膜症が見つかっていなくても、初期に集中的なフォローが必要になります。
- 糖尿病と診断されたばかりで、HbA1cが高い方(特に9〜10%以上)
- 糖尿病で入院し、インスリン治療などで急激に血糖が改善された方
- 長期間にわたって血糖コントロールが悪く、これから治療を強化していく方
これは「early worsening(早期悪化)」と呼ばれる現象によるもので、長期間高血糖だった方の血糖値が急に改善すると、かえって網膜症が一時的に悪化することが知られています。Early worseningによる視力低下は約半数で残ってしまうため、特に注意が必要です。
当院では、こうしたリスクのある方には、内科主治医と連携しながら、最初の6か月は毎月程度の眼科診察で、網膜の状態を細かく確認していきます。
糖尿病網膜症について知っておいていただきたいこと
失明原因の上位を占める病気です
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症のひとつで、網膜の細い血管が高血糖により障害されることで起こります。日本における中途失明の主要原因のひとつで、特に働き盛りの世代の視力低下・失明の原因として、社会的にも深刻な病気です。
自覚症状が出にくいのが、最大の落とし穴
糖尿病網膜症のもっとも怖いところは、初期から中期にかけて、ほとんど自覚症状がないことです。「見えにくい」「視野に異常がある」と気づいたときには、すでに増殖期に入っていて、硝子体出血や網膜剝離が発生している──というケースも少なくありません。
だからこそ、症状がないうちから定期的に眼科で検査を受けることが、視力を守る最善の方法になります。
糖尿病と診断された時点で、すでに発症している場合も
2型糖尿病の方の場合、糖尿病と診断された時点で、すでに約30%の方に何らかの糖尿病網膜症が見つかると報告されています。「糖尿病になったばかりだから、まだ目は大丈夫」という思い込みは禁物です。
病期と治療法
糖尿病網膜症は、進行度に応じて病期が分類されます。各病期で必要な治療は異なります。
| 病期 | 主な眼底所見 | 主な治療 |
|---|---|---|
| 単純糖尿病網膜症(初期) | 毛細血管瘤、点状出血、硬性白斑 | 血糖コントロール、経過観察 |
| 増殖前糖尿病網膜症(中期) | 軟性白斑、無灌流領域、網膜内細小血管異常 | レーザー光凝固術 |
| 増殖糖尿病網膜症(進行期) | 新生血管、硝子体出血、牽引性網膜剝離 | 汎網膜光凝固、抗VEGF療法、網膜硝子体手術 |
| 糖尿病黄斑浮腫(どの病期でも発生) | 黄斑部の網膜浮腫 | 抗VEGF硝子体注射、ステロイド注射、レーザー治療 |
当院で行う主な治療
レーザー光凝固術
無灌流領域や新生血管の発生を抑えるため、網膜にレーザーを照射する治療です。新生血管の発生を防ぎ、増殖期への進行を抑制する効果があります。日帰りで対応します。
抗VEGF硝子体注射
糖尿病黄斑浮腫や増殖糖尿病網膜症に対する治療です。VEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑える薬剤を眼内に注射し、新生血管の発生や網膜浮腫の改善を図ります。外来での日帰り治療です。
治療の詳細は硝子体注射のページをご覧ください。
網膜硝子体手術(日帰り対応)
硝子体出血や牽引性網膜剝離など、進行した病態に対する手術です。濁った硝子体や増殖膜を取り除き、網膜の状態を安定させて視力の維持・回復を目指します。
網膜硝子体手術は眼科手術の中でも難易度が高い手術ですが、当院では日帰りでの対応が可能です。当日にご帰宅いただけるため、入院による生活への影響を最小限に抑えられます。
リスクについて
糖尿病網膜症の治療は、視力を守るために不可欠ですが、外科的処置である以上、それぞれの治療にリスクが伴います。当院では、メリットだけでなくリスクについても術前に丁寧にご説明します。
レーザー光凝固術のリスク
- 治療後、一時的な視力低下や視野の狭まり
- 暗順応の遅延(暗いところでの見えにくさ)
- まれに黄斑浮腫の発生・悪化
多くは時間とともに軽減しますが、永続的に残る場合もあります。
抗VEGF硝子体注射のリスク
- 眼内感染(極めてまれ)
- 一時的な眼圧上昇
- ごくまれに全身性の血栓塞栓イベント
当院では清潔な処置環境と術後の経過観察体制で、これらのリスクの最小化に努めています。
網膜硝子体手術のリスク
- 術後の白内障の進行
- 再出血、網膜剥離
- 眼内炎(極めてまれ)
リスクのある手術ですが、進行した病態を治療できる唯一の方法です。当院は網膜硝子体手術の実績があり、術中・術後の合併症対応にも体制を整えています。
治療しても進行する可能性
糖尿病網膜症は、適切な治療を行っても進行する場合があります。視力を守る最大の鍵は、血糖・血圧・脂質の管理を内科と連携して継続することです。
リスクがあるからこそ、経験豊富な眼科医による定期的な経過観察と、適切な時期の治療介入が重要です。
よくあるご質問
- 糖尿病と診断されたばかりですが、自覚症状がなくても眼科を受診すべきですか?
- はい、必ず受診してください。糖尿病網膜症は自覚症状が出にくく、診断時にすでに発症している場合があります。日本糖尿病眼学会も、糖尿病と診断された時点での眼科受診を推奨しています。
- 健康診断で「眼底に異常あり」と指摘されました。すぐに失明しますか?
- すぐに失明することはほとんどありません。ただし、放置すれば進行する可能性はあるため、できるだけ早く眼科で精密検査を受けることをお勧めします。当院で現在の病期を確認し、必要な対応をご提案します。
- 内科のかかりつけ医がいますが、検査結果を共有してもらえますか?
- はい、糖尿病眼手帳・糖尿病連携手帳を通じて、内科主治医と検査結果や病期情報を共有しています。お持ちの手帳があれば、受診時にご持参ください。
- レーザー治療は痛いですか?
- 点眼麻酔で行うため、強い痛みを感じることはほとんどありません。多少の刺激感を感じる方もいますが、短時間で終了します。
- 硝子体注射は通院での治療ですか?
- はい、外来での日帰り治療です。注射自体は数分で終わり、当日中にお帰りいただけます。
- 網膜硝子体手術は入院が必要ですか?
- 当院では日帰りでの網膜硝子体手術に対応しています。当日にご帰宅いただけるため、入院による生活への負担はありません。ただし、術後しばらくは安静と通院が必要です。
- 妊娠中ですが、検査や治療は受けられますか?
- 妊娠中は糖尿病網膜症が進行しやすいため、定期的な眼底検査が特に重要です。レーザー治療や手術も妊娠中に行うことができますが、抗VEGF療法については安全性が確立されていないため、原則行いません。具体的な治療方針は、産科主治医と連携の上で決定します。
- 一度治療したらもう通院しなくていいですか?
- いいえ、糖尿病網膜症は治療後も再発・進行する可能性があり、生涯にわたる経過観察が必要です。当院では、患者さまの目の状態に合わせた長期的なフォロー計画をご提案します。
- 検査だけ受けることはできますか?
- もちろんです。「現在の目の状態を知りたい」というご相談だけでも歓迎します。検査の結果、治療が不要であれば、次回の検診時期をご案内するだけで終わります。
まずは一度、眼科で目の状態を確認してください
糖尿病網膜症は、自覚症状が出てからでは手遅れになることがある病気です。「内科で糖尿病と言われたけれど、目はまだ何ともない」──そんな今こそ、眼科を受診すべきタイミングです。
当院は、初期の経過観察から、進行期の網膜硝子体手術まで、一貫して対応しています。一度治療したら終わりではなく、生涯にわたって患者さまの目を守るパートナーとして、長くお付き合いしていきます。
ご予約はお電話にて承っております。内科でお手元にある糖尿病連携手帳・糖尿病眼手帳がございましたら、受診時にご持参ください。